預り金が負債の理由
預り金は負債です。
では、なぜ負債になるかを説明できるでしょうか。
今回は、下の図を使って説明していきます。
6つのグループ中、2つに当てはまれば分類ができるのですが、「預り金」はなかなかにくせ者です。
無理矢理こじつけて説明します。
まず「形があるか」です。
お金を預かっているから、預り金です。
なので、預り金はお金のことです。
ということで、「お金」自体に形があるかを考えます。
硬貨や紙幣は目に見えるものです。
よって、形があるものになります。
「資産」か「負債」の2択になりました。
次に、預り金が発生したときに「左右のどちらに書くか」です。
給料などの仕訳を想像すると
給料 ×× 預り金 ××
現金 ××
となり、預り金は「右」で発生しています。
逆になくなるときは、
預り金 ×× 現金 ××
です。
発生時に右なので「負債」か「収益」の2択です。
最後に、「将来、嬉しいか」です。
お金を預かっているので、今手元にはお金があります。
しかし、これはいずれ返すものなので、自分のものではありません。
よって、嬉しくないものです。
「負債」か「費用」の2択になります。
一つ目で「資産」か「負債」
二つ目で「負債」か「収益」
三つ目で「負債」か「費用」
に絞りました。
共通するのは「負債」ですね。
この三つのうち、二つを思いつけば分類ができます。
仮払金が資産の理由
仮払金は「資産」です。
結論を先に述べましたが、今回はなぜ仮払金が資産なのかを説明したいと思います。
1将来、嬉しいものかどうかを考える
「仮払い」ということは、今お金を払っているので、
将来は払う必要はありません。
「将来お金を払わないこと」は嬉しいことなので、資産か収益です。
2発生時を考える
仮払金が発生したとき、仕訳はこうなっています。
仮払金 ××× 現金 ××円
仮払金は「左で発生」してますね。
左で発生するのは、資産か費用です。
今、選択肢にあるのは「資産か収益」「資産か費用」になっているので、
2つに共通した「資産」が答えになります。
考え方はまだあります。
3考えられる選択肢を削る
「仮払金」とは、何を買ったのか具体的な処理がはっきりとわからないから、
代わりに臨時的な勘定科目を入れておこう、というもの。
だいたいが、現金で何かの代金を支払っているけど、詳細がわからないケースです。
現金で払っていると言うことは、資産が減っています。
??? ××円 現金(資産) ××円
ここで、ポイントは簿記は貸借(左右)が一致しないといけないということ。
左側に書ける項目は次の通りです。
①資産の増加
②負債の減少
③資本の減少
④費用の発生
⑤収益の減少
まだ、何にお金を使ったか分かっていないのに、「費用」や「収益」を使うのはおかしいですね。
なので、①②③のどれかになります。
結論は①です。
では、②と③は何がいけないのでしょうか。
②は負債がなくなったときの処理です。
例えば買掛金の減少などですね。
今回は「とりあえずお金を支払った」だけなので、別に負債は減少していません。
なので②は消えました。
では、③はどうでしょうか。
「資本」が減少するときは、利益を配当したり、そもそも資本の額を減らすときです。
今回はそんな特殊な場面ではありません。
なので③も選択肢から消えます。
よって、残る①になります。
資産(現金)がなくなって、相手の勘定科目が必要だから、とりあえず同じ資産にする。
貸借を合わせるために無理矢理「資産を発生」させたのです。
まあ、こんな覚え方もできますが、「仮払金は資産」と覚えた方が早いです。
逆の考え方で、「仮受金は負債」です。
売上について ③まとめ ※練習問題あり
【前回】
https://pen-hakase.hatenablog.com/entry/2021/05/12/150000
ここでさっきの仕訳を並べてみましょう。
Aさん
Bさん
実はこの2つの仕訳、相反するものになっているのです。
同じ取引をそれぞれ違う立場から仕訳にしているので、当たり前といえば当たり前です。
Aさんは売ったので売上が発生し、
Bさんは買ったので仕入が発生しました。
Bさんは現金で支払ったので現金がなくなり、
Aさんは現金を受け取ったので現金が増えました。
ここでポイントですが、仕入は左で発生し、
売上は右で発生します。
なぜなら、「仕入は費用」「売上は収益」だからです。
なぜ場所が決まっているのか。
以前にも見せたイメージ図です。
この「収益」「費用」は、それぞれ収益と費用が発生したときに どっちに書くかを示したものでした。
「売上は収益、収益は右側で発生するものなので、売上が発生した時は右側に書く。」
「仕入は費用、費用は左側で発生するものなので、仕入が発生した時は左側に書く。」
仕入は左、売上は右。
これは基本形なので覚えちゃったほうが早いこともありますが、なぜそっちに書くのかと考えたときに、一応の理由はあるのです。
ここまで、仕入と売上をどっちに書けばいいかを説明しましたが、今回の問題に関してはもっと簡単な考え方があります。
それは、「現金の流れを見る」ことです。
売上と仕入の場所がわからなくなっても、「現金が増えるのは嬉しいこと、なくなるのは悲しいこと」とわかれば、どっちに書けば良いかがわかると思います。
あとは仕入れた側なのか売った側なのか、どっちの立場か考えて、勘定科目を入れればいいのです。
今回、固定資産の売買の時の分記法、商品売買のときの三分法を紹介しました。
この基本の考え方がわかれば、解ける問題の幅が増えます。
練習問題も用意したので、何度も繰り返して完璧を目指しましょう。
なお、商品売買の三分法について、何度も「商品」は使わないと強調しました。
しかし三分法に使う勘定科目に「繰越商品」があると説明があるので、困っている人もいるかと思います。
「繰越商品」は決算の時限定で出てきます。
つまり、普段の取引で「商品」を使わないやり方を三分法というのです。
なぜこんなやり方が生まれたのか。
説明すると難しくなりますし、簿記を学び始めたばかりの皆さんにはしんどい話になってしまいます。
なので、ここは深追いせず、そんなもんなんだ、と思っておきましょう。
最後にまとめておきます。
分記法
主に固定資産の売買で使われる。
買った時の価格と売ったときの価格を、分けて記入する手法。
三分法
商品売買の際に、3つの勘定科目科目を使い分けて仕訳を切る手法。
「仕入」「売上」「繰越商品」を使う。
練習問題を用意しましたので、復習に活用してください。
最後に、皆さんが昨日よりも成長出来たことを祈ります。
合格目指して頑張りましょう!
売上について ②商品を売った
【前回】
https://pen-hakase.hatenablog.com/entry/2021/05/11/150000
分記法は商品以外の売買取引で使われる手法です。
ここでわざわざ「商品以外」と書いてあるのは理由があります。
商品が売買されたときは、「三分法(さんぶんぽう)」により仕訳を切るのです。
三分法とは何でしょうか。
基本的に使う勘定科目が3つに分かれるということです。
3つの勘定科目とは
「仕入」「売上」「繰越商品」です。
今回は「仕入」と「売上」を中心に紹介します。
「繰越商品(くりこししょうひん)」は難しいので、次回に回しましょう。
では例題を使って説明します。
『AさんはBさんに商品を50,000円で売って、現金で受けとりました。』
AさんとBさん、それぞれの仕訳を考えましょう。
Bさんから考えますね。
Bさんは商品を買った側です。商品が手に入ることは嬉しいことですね。
なので左側に「商品」と書きたくなります。
しかし!
三分法では、「商品」は使ってはいけません!
(「繰越商品」と「商品」は別の存在です。)
なので、買った側は「仕入」を使います。モノを買うことを仕入れといいますね。
ですから、商品の代わりに仕入が左側にきます。
対価は現金で支払っているので、右側に現金を書きます。
これが商品を買ったBさんの仕訳です。
ではAさんはどうでしょうか。
Aさんは商品を売った側です。
商品を売ったということは、商品がなくなったということなので、悲しいから商品を右側に書きたくなりますが、違います。
繰り返しますが、三分法では「商品」は使いません!
なので、「商品」の代わりに「売上」を使います。商品を売ったのですから「売上」を使うのは納得いくかと思います。
そして現金を受け取ったので、左側は現金ですね。
これでAさんの仕訳は完成です。
【次回】
売上について【全3回】 ①パソコンを売った
今回は売上に関連する仕訳について紹介します。
では、前回登場したパソコンを再び例題として使いましょう。
覚えていますか?
前回の例題で、パソコンを100,000円で買いましたね。
しかし、そのパソコンは実はプレミア品で、あなたの友人が150,000円で譲ってほしいと言ってきました。
どんな仕訳になるでしょうか。
パソコンを買ったときの仕訳はどうでしたっけ?
でした。
このパソコンを売ったのですから、パソコンはなくなりましたね。パソコンがなくなるのは悲しいことなので、右側に書きます。
そして友人から現金で150,000円を受け取りました。嬉しいので左側に書きます。
となります。
これで完成、と思いきや、左右の合計が一致していませんね。
仕訳はバランスが取れていないとダメでした。
左側が50,000円多いです。なので、右側に50,000円を足します。
これで左右の合計は合いましたが、勘定科目がありませんね。
何と書けば良いのでしょうか。
10万円のパソコンを15万円で売ったのですから、5万円儲けましたね。
つまり、売却したら利益が出たということです。
よって使う勘定科目は「備品売却益」ですが、これを使わないことが多いです。
あなたが解く問題に「備品売却益」があればそれでいいですが、違う勘定科目を使うケースがほとんどです。
じゃあ、どうするの?となりますね。
答えは一つです。
「固定資産売却益」を使います。
ここでいう「固定資産(こていしさん)」とは備品のことです。
主に商品以外の資産で、売買の対象となる資産(備品、建物、土地など)を固定資産といいます。
なので答えは
となります。
今回は備品を、買った時よりも高い価格で買い取ってもらえたので、利益が出ました。
しかし、80,000円で売ったときなど、買ったときの価格よりも低い価格で買い取ってもらうと損をしますね。
そんな時は「固定資産売却損」を使います。
やはり、左右の合計は一致します。
このように買ったときの価格と売ったときの価格で、左右の価格を分けて書く仕訳の方法を「分記法(ぶんきほう)」といいます。
購入価格(原価)と売却価格を分けて記入するのですね。
【次回】
仕訳とは2 ②2行になる仕訳、現る!? ※練習問題あり
【前回】
https://pen-hakase.hatenablog.com/entry/2021/05/06/150000
前回、勘定式の話をしました。
ここで何度も言いますが、「資産」「負債」「収益」「費用」の場所がとても大事なのです。
もう一度見せます。
なぜこんなにも強調するのかと言うと、それは各項目の発生の場所を示しているからです。
どういうことかというと、例えば前回の問題の「土地」を使って説明します。
土地は「資産」です。
ここまではわかりますね。
土地を買いました。資産が発生しました。
仕訳を思い出してください。
資産(土地)が左側にあります。
B/Sを見てください。
資産は左側ですね。
資産は発生した時、必ず左側で仕訳を切ります。
なぜなら、B/Sの左側に載せるものだからです。
逆に右側にある「当座預金」
当座預金も資産です。
当座預金はなくなっています。
資産が減少(消滅)しました。
すると、発生の逆で、右側に書きます。
言い替えると、資産が右側に書いてあると、何かがなくなっていることを意味するのです。
今回は50,000,000円の資産(土地)が発生して、同時に資産(当座預金)が消えましたね。
これで初めて釣り合いが取れるのです。
釣り合いが取れる、つまりはバランスが良い。だからバランスシート(Balance Sheet:B/S)と言うのです。
B/S、P/Lの勘定式では、常に左右の合計が一致します。
これはこれまでの仕訳がしっかり切られた結果なのです。
つまり何が言いたいかと言うと、仕訳も左右が一致しなくてはいけません。
「え、一行に同じ金額書くんだし、逆に一致しないの?」
と思うかもしれません。
実はこれから2行、3行の仕訳が現れるんです。
さっきの問題では、50,000,000円をすべて当座預金から支払いました。
では、代金のうち20,000,000円を現金で支払い、残りの30,000,000円を当座預金で支払っていたらどうでしょう。
バラバラに考えることも出来ます。
つまり、20,000,000円の土地を現金で、
30,000,000円の土地を当座預金で支払ったと考えるのです。
するとどうなるでしょう?
これで良いのです。
しかし、簿記の試験は時間との勝負。
いかにコンパクトにまとめることが出来るのかがスピードアップのコツになります。
今回、左側に土地を2回書いてますね。
そのせいで金額も2回書いています。
何秒のロスになるでしょうか。
時間がもったいないので、土地の金額を合計しちゃいます。
コンパクトになりました。
どちらを書いても正解ですが、後者の方がシンプルですね。
もちろん貸借合計(たいしゃくごうけい)つまり、左右の合計はどちらも50,000,000円となり、バランスは取れています。
「20,000,000円の土地と30,000,000円の土地を買った」
という考え方は非常に初心者向けです。
半歩進みましょう。
問題文にもありましたが、読んだものをそのまま仕訳に起こしてもいいのです。
土地50,000,000円を購入しました。
嬉しいので、左に書きます。
現金がなくなりました。
いくらなくなりましたか?
20,000,000円です。
悲しいので右に書きます。
当座預金もなくなりました。
悲しいので右に書きます。
するとどうでしょう。
左右の合計額は等しいですし、最初の仕訳と同じ答えになりましたね。
二つの仕訳を考えて合算させるより簡単だと思いませんか?
これから先、1行以上の仕訳はたくさん出てきます。
左右どちらも2行以上となったとき、確認しなければいけないのは、
左右の合計が同じかどうかです。
絶対にバランスは保ってくださいね。
少しずつ難易度が上がってきました。
次回からはついに個別論点を説明していきます。
しかし、これまでの基礎に着いてこれなかった人にとってはとても辛い話になります。
焦らず今までの論点の見直しをしましょう。
それでは最後に。
皆さんの合格を心から祈っております。
合格目指して頑張りましょう!
仕訳とは2【全2回】 ①勘定式と報告式
【仕訳とは 超基礎編】
https://pen-hakase.hatenablog.com/entry/2021/04/30/150000
さあ、今のあなたは「仕訳」と言われるとある程度のイメージがつくと思います。
では、復習です。
次の仕訳を答えてください。
『土地を50,000,000円で購入し、代金は当座預金から支払った。』
さあ、どうですか?
土地を買いました。嬉しいですね。
当座預金がなくなりました。悲しいですね。
解答は
となります。
この仕訳が出来なかった人は、前回に戻ってしっかり見直しをしてきてください。
今回は少し難しくなります。
その前に。
実は、B/S、P/Lの話をしたときに省いていた話があります。
仕訳の前にまずはこれを紹介しようと思います。
まず、皆さんに悲しいお知らせです。
P/Lと言えばこの形式を紹介しましたね。
これは上から下に情報が載っている「報告式」と呼ばれ、逆にB/Sのように左右に情報を載せるのを「勘定式(かんじょうしき)」と言います。
実はP/Lにも「勘定式」があります。
隠しててごめんなさい。
B/Sと似ていますね。
しかし、中の項目は当然違いますし、場所を間違えると大変なことになります。
(後で説明しますね)
ここで大事なポイントです。
実は勘定式は左右で合計が等しくなるという特徴があるのです。
以前も見せたB/Sです。
一番下を見てください。
資産の合計と、負債と資本の合計はどちらも10,800円と等しくなってますね。
これは以前見せたP/Lを勘定式に変換したものです。
こちらも左右の合計は50,000円と等しくなっています。
収益と費用の差を純損益としているので、当然と言えば当然ですね。
【次回】