減価償却 ④残存価額って? ※練習問題あり

【前回】

https://pen-hakase.hatenablog.com/entry/2021/06/10/150000


少しレベルアップしましょう。

 

残存価額(ざんぞんかがく)についてです。

問題文に

 

「残存価額 0

「残存価額 取得価額の10%

 

といった表記を見たことがありませんか?

 

「残存価額って何?」となりますね。

残存価額は耐用年数が終わった後に、残った価値のことをいいます。

 

建物を20年使っても、まだまだ現役で使える、ってことはありますね。

そんなときは、「20年後は2,000,000円くらいだな」と予測しておくのです。

 

すると計算に影響が出ます。

ここで注意です!

この時、影響が出るのは「定額法」です!

定率法は気にしなくていいです。

減価償却にはいろいろな計算法がありますが、定率法だけが残存価額を使いません

本当に気をつけてください。

よく間違えます。

 

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はぶられる定率法

 

では、どう計算が変わるのでしょうか。

 

考えてみてください。

定額法の時、20,000,000円を20年で割ったのは、20,000,000円を20年で費用(減価償却費)にするためでした。

 

でも、残存価額があるということは、20減価償却した最後のB/Sに残存価額分の金額が載ってないといけません。

 

取得価額の10%を残存価額とする問題の場合、残存価額は2,000,000円になりますね。

 

20年間フルで減価償却してしまうと、最後の価値は0円となってしまい、2,000,000円をB/Sに載せることができません。

 

 

だから、こうするのです。

 

(取得価額残存価額)÷耐用年数

 =減価償却

 

この例題の場合、

(20,000,000-2,0000,000)÷20=900,000

 

1年の減価償却費は100万円から90万円になりました。

 

 

20年間、減価償却すると

 

900,000×20=18,000,000

 

となり、2,000,000円は減価償却されていません。

B/S2,000,000円が残りましたね。

残存価額と一致しています。

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これが、残存価額がある場合に注意しなければいけないことです。

 

 

残存価額は問題の指示に従ってください。

 

もし問題文に「残存価額 1円」とあれば、最後の年に、残存価額が1円になるように調整してください。

 

今まで100万円で償却していても、最後の年だけ999,999円にするのです。

処理は簡単なので、忘れないようにだけ気をつけてください。

 

では、ここから少し応用的な話になります。

しんどい人は、下の練習問題まで飛ばしちゃいましょう。

 

 

 

 

大丈夫ですか?  

 

ではお話します。

 

なぜ定率法なんて、ややこしいやり方が存在してるかです。

 

「定額法の方が簡単なのに、なぜ定率法を採用してるの?」となりませんか?

 

これは、費用を平準化するために行われているんです。

 

難しい話ですね。

 

簡単なお話で例えてみましょう。

あなたはパソコンを買いました。

耐用年数は4年、残存価額0、償却率は0.5です。

 

このパソコンが160,000円だったとします。

 

定額法なら簡単ですね。

160,000÷4=40,000

となります。

 

毎年、40,000円を減価償却費として、費用に計上します。

 

でも、実際のところ、毎年費用の額を同じにするのは現実的ではありません。

 

パソコンなんて、4年もしたら古くなりますね。もしかすると3年目で使いものにならなくなる、なんてこともあるかもしれません。

 

そうすると、パソコンを修理に出しますね。

3年目に35,000円の修理費が発生したとしましょう。

 

費用は

1年目  40,000減価償却費)

2年目  40,000減価償却費)

3年目  40,000減価償却費)

     +35,000円(修理費)

     =75,000

4年目  40,000減価償却費)

 

となり、3年目の負担が大きくなっています。

費用が定額になることを目指して、定額法にしたのの、結局は定額になってませんね。

 

 

では、4年間を通して、ほぼ同じような負担になるような方法はないか。

そうして生まれたのが「定率法」なのです。

 

前回、定率法の例題で作った表を見ましょう。

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毎年、減価償却費は減少していますね。 

これは、もしもの時のリスクに備えた対策なのです。

 

どういうことかというと、さっきのパソコンなら、時間が経てば経つほど修理の頻度も増えるし、修理費も増します。

 

最初の年より、耐用年数の後半の方が修理費が多くなるのは当然のことですね。

 

なので、「これから修理費が発生するし、耐用年数後半の費用が増すから、最初のうちは減価償却費を大きくしておこう」とするのです。

 

すると、このパソコンの減価償却費は

1年目  80,000減価償却費)

2年目       40,000減価償却費)

3年目       20,000減価償却費)

     +35,000円(修理費)

     =55,000

4年目      20,000減価償却費)

 

となり、費用の偏りを防げます。

定額法とは違い、3年目の費用が飛び抜けて高い、ということがなくなりましたね。

 

1年目が高くなってしまっているのは、定率法の特徴です。

なので、気になるポイントからは外してください。

 

「これから先、何が起こるかわからないから、費用は余裕のあるうちに多めに出しておこう」とするのですね。

 

これはリスク回避の一つです。

 

簿記の試験でこんな理論の回答はしませんが、会計の分野になると、知っておかなければいけないことです。

 

今は軽く「へぇ、そうなんだ」くらいにしときましょう。

 

 

 

さて、こんな難しい話は置いておいて。

減価償却はパターンを覚えてしまえば解答は容易なので点数源になります。

慣れるまでは大変ですけどね。

 

3級を受験する人は定額法と定率法が計算できれば大丈夫です。

減価償却費が計算出来ればいいのです。

 

しかし、2級、1級と難易度が上がると「生産高比例法」「級数法」なんてのも出てきます。

(なんだかんだ言って、個人的に一番難しいのは定率法だと思いますが)

 

何も考えずに端的に仕訳を切るのと、内容を知った上で仕訳を切るのでは、応用問題に当たった時に差が出ます。

もちろん、応用問題も正解したいですよね?

 

 

内容を理解すれば、簿記は楽しくなります。

というのは私の持論ですが、確実に理解すれば問題も解けるようになります。

何回もいろんな問題を解いて、まずは基礎力を身につけましょう。

 

練習問題を用意しています。

仕訳が切れることはもちろんですが、B/Sの読み取りもしっかりできるようにしましょう。

 

練習問題<PDFファイル>

 

解答<PDFファイル>

 

最後に、ここまで読んでくれた方の疑問が解決していることを祈ります。

合格を目指して頑張りましょう!

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