減価償却【全4回】 ①減価償却って?
減価償却(げんかしょうきゃく)って簿記を勉強していると必ず耳にしますよね。
特に総合問題に減価償却の問いは付き物です。
何となくやり方を暗記してしまっていることはありませんか?
減価償却を知らない人は、そもそも減価償却って何?となるでしょう。
字の通り「価値を減らす償却」のことです。
しかし、これだけで意味がわかれば苦労はしませんね。
例題を見ながら考えてみましょう。
(以下、決算は3月31日とします)
例えば
『×1年4月1日に建物を20,000,000円を現金で購入した。』
どんな仕訳になりますか?
皆さんこの仕訳を書きますよね。
もちろん正解です。
ここで注目したいのは「建物」という勘定科目です。
「建物」ってB/S(貸借対照表)の「資産」ですよね。
つまり、このままでは永遠に「費用」にはならないんです。
「なぜ費用にならないの?」
「そもそも費用になることってあるの?」
と疑問を持つ方がいるかもしれません。
例えば、商品なら売れたら売上原価として費用に計上できます。
原価は費用というのは想像しやすいかと思います。
しかし、固定資産は売却しても費用にはならないんです。(売却損益は出ますが)
建物取得費なんて勘定科目があれば取得時に費用になるんですけど、現行の規定では採用されていません。
だから減価償却によって費用化するんです。
「じゃあ、何で費用化したいの?」
と思ってしまいますね。
固定資産は物によっては、何千万円もしくは何億円になります。
これがすべて購入時には資産として計上されています。
資産に計上されることは悪いことなのか。そういうわけではありません。
ただ、結果として、税金が高くなってしまいます。
例えば、利益に40%をかけて税金を計算するとします。
売上が100億円で費用が0円なら、利益は100億円です。
納める税金は100億円×40%=40億となります。
では、減価償却をすればどう変わるでしょうか。
減価償却費が2億円発生したとします。
売上が100億円で費用が2億円なため、利益は98億円です。
納める税金は98億円×40%=39億2000万円となります。
費用が発生したおかげで利益が少なくなり、税金は安くなるのです。
なので、会社としては費用をたくさん出したいわけです。
だから、資産として計上するより、費用にしたいんですね。
先程の例題に戻ってみましょう。
『×1年4月1日に建物を20,000,000円を現金で購入した。』
ここで問題文に追加要素です。
実はこの問題の続きに
「建物は定額法により処理するものとし、耐用年数は20年である」
と記載がありました。
「定額法って? 耐用年数?」
となりますね。
定額法とは、減価償却の金額をいくらにするかを決める方法の一つです。
簡単に言うと、減価償却の金額を毎年同じ金額にしようとするやり方です。
では、毎年っていったい何年間くらい減価償却するの?
というときに使うのが耐用年数です。
この問題の場合、耐用年数が20年なので、20年にわたって建物を使用します。
だから、20年間同じ金額を費用にしてください、と言っているのです。
では、どうすればいいでしょうか。
難しく考えてはいけません。
買ったときの取得価額を20年間で減価償却すればいいんです。
減価償却とは固定資産の価値を減らすことでした。
先に答えを言っておきますと、減価償却費は100万円です。
計算式は次回お伝えします。
取得価額を耐用年数で償却するわけですが、そもそも取得価額とは買ったときの時価のことです。
つまり仕訳で
としたときの、この2000万円が買ったときの時価、つまり取得価額です。
今回新しい用語がいくつか出てきましたが、
「減価償却」
「定額法」
「耐用年数」
「取得価額」
はしっかりおさえるようにしてください。
(「償却」を「消却」と間違えないように注意してください。簿記あるあるです)
減価償却は問題として出題されるパターンがいくつかあります。
簡単なのは、仕訳問題として問題文に情報がすべて載っているパターン。
慣れが必要になるのは、B/Sから情報を探すパターン。どの数字がいつ時点のものなのか(期首なのか期末なのか)、わかっていないと解けません。
難しいのは、必要な情報が表に載っているパターン。この場合、一部の情報が空欄になっていることがあります。すると、その情報も自分で計算しなければなりません。減価償却累計額が空欄だったり、取得価額を自分で計算しなければいけないこともあります。
試験ではどれが出題されるかわかりません。第4回に練習問題があるので、数をこなしてできるようになりましょう。
次回、減価償却の詳しい手続きを紹介します。
【次回】