自己振り出しの小切手
「小切手」というワードを聞くと、「当座預金」を連想する方が多いかもしれません。
あるいは、「小切手を受け取った」なら「現金」ですね。
小切手を「振り出した」なら当座預金
小切手で「受け取った」なら現金
確かに、よくあるパターンはコレです。
しかし、一点気をつけなればいけないことがあります。
それは「誰が振り出した小切手なのか」です。
自分が小切手を振り出すと、自動的に当座預金がなくなると紹介しました。
自分が振り出したので「自己振り出しの小切手」ですね。
【当座預金の回】
https://pen-hakase.hatenablog.com/entry/2021/06/01/150000
誰かが振り出した小切手を受け取ると、それを銀行に持っていって現金に変えます。
なので、小切手は「ほぼ」現金でした。
この時、現金で処理できたのは、「他人振り出しの小切手」だからです。
要注意なのは、「自己振り出しの小切手を受け取る」ときです。
自分が振り出した小切手が、取引相手が現金にする前に、自分の元に巡り巡って帰ってきました。
この時、受け取った小切手を「現金」と処理してはいけません!
「当座預金」になるのです!
もともと、小切手を振り出したことにより、自動的に当座預金が減少していました。
その小切手が手元に戻ってきたのです。
手放した小切手が戻ってきた。
つまりは、何もなかったことになります。
何もなかったのに、当座預金が減っているのは変なことですね。
よって、当座預金をもとに戻す、「当座預金の増加」の処理をするんです。
小切手を振り出したときは、何もせずとも当座預金が減ったので、その小切手が戻ってきたときも、勝手に当座預金が増えているのです。
まとめ
自分が小切手を振り出す→当座預金減少
誰かの小切手を受け取る→現金増加
自分の小切手が戻ってくる→当座預金増加
他人振り出し、自己振り出しという言葉に惑わされないようにしましょうね。
取得価額を求める問題
車両の取得価額は?
×0年4月1日に車両を購入した。残存価額は取得価額の10%であり、耐用年数は9年である。減価償却は定額法により行なっている。
×3年3月31日に決算を迎えた。この時の車両の帳簿価額は280,000円である。
この問題、どうやって取得価額を求めるのでしょうか?
オススメは方程式を使うことです。
方程式といっても、中学1年生レベルのものなので、そんなに難しくありません。
方程式を作るためのポイントは4つ
1 求めたい値をXとする
2 減価償却費の公式
3 減価償却累計額の公式
4 帳簿価額の公式
これを意識すれば、取得価額は求められます。
1は簡単ですね。今回求めるものは取得価額なので、取得価額をXとします。
2以降は簿記の知識を織り交ぜながら、式を作ります。
減価償却費の求め方は大丈夫でしょうか?
定額法なので、(取得価額-残存価額)÷耐用年数です。
まずは残存価額を文字式にします。取得価額はXです。残存価額は取得価額の10%なので、Xの10%で0.1Xとなります。
これにより、( )の中の計算、つまり取得価額-残存価額はX-0.1Xになり、0.9Xと求められます。
( )で計算した結果を耐用年数で割るのですから、0.9Xを耐用年数の9で割った0.9X÷9が減価償却費です。
文字式でみると変な感じですね。
次に3で減価償却累計額を求めます。
×0年4月1日に車両を購入し、×3年3月31日の決算が到来しているのですから、決算は全部で3回迎えています。
よって、減価償却も3回しているとわかります。
ですので、減価償却累計額は0.9X÷9×3となります。
先程、求めた減価償却費に×3をするだけです。
最後に4で帳簿価額を求める式を作ります。
そもそも帳簿価額は、取得価額-減価償却累計額です。
ここまで1〜3で、取得価額と減価償却累計額はすでに文字式にしてあります。
取得価額はX、減価償却累計額は0.9X÷9×3です。
よって、帳簿価額はX-(0.9X÷9×3)です。
減価償却累計額の部分は( )でくくってあげましょう。
ここでようやく方程式の形にします。
問題により帳簿価額は280,000円です。
X-(0.9X÷9×3)=280,000
このXを求めれば、取得価額がわかるわけです。
方程式の解き方を説明します。
まず( )の中を電卓で計算します。
Xを一度無視して、0.9÷9×3をすると、0.3ですね。
この計算結果にXをつけます。0.3Xになりました。
次にX-0.3Xをします。0.7Xです。
ここまでで、0.7X=280,000になりました。
あとは280,000÷0.7をすると400,000になり、X=400,000です。
Xは取得価額でしたので、これで取得価額が求めれました。
解答 車両 取得価額400,000円
減価償却 ④残存価額って? ※練習問題あり
【前回】
https://pen-hakase.hatenablog.com/entry/2021/06/10/150000
少しレベルアップしましょう。
残存価額(ざんぞんかがく)についてです。
問題文に
「残存価額 0」
「残存価額 取得価額の10%」
といった表記を見たことがありませんか?
「残存価額って何?」となりますね。
残存価額は耐用年数が終わった後に、残った価値のことをいいます。
建物を20年使っても、まだまだ現役で使える、ってことはありますね。
そんなときは、「20年後は2,000,000円くらいだな」と予測しておくのです。
すると計算に影響が出ます。
ここで注意です!
この時、影響が出るのは「定額法」です!
定率法は気にしなくていいです。
減価償却にはいろいろな計算法がありますが、定率法だけが残存価額を使いません。
本当に気をつけてください。
よく間違えます。
では、どう計算が変わるのでしょうか。
考えてみてください。
定額法の時、20,000,000円を20年で割ったのは、20,000,000円を20年で費用(減価償却費)にするためでした。
でも、残存価額があるということは、20年減価償却した最後のB/Sに残存価額分の金額が載ってないといけません。
取得価額の10%を残存価額とする問題の場合、残存価額は2,000,000円になりますね。
20年間フルで減価償却してしまうと、最後の価値は0円となってしまい、2,000,000円をB/Sに載せることができません。
だから、こうするのです。
(取得価額−残存価額)÷耐用年数
この例題の場合、
(20,000,000-2,0000,000)÷20=900,000
1年の減価償却費は100万円から90万円になりました。
20年間、減価償却すると
900,000×20=18,000,000円
となり、2,000,000円は減価償却されていません。
B/Sに2,000,000円が残りましたね。
残存価額と一致しています。
これが、残存価額がある場合に注意しなければいけないことです。
残存価額は問題の指示に従ってください。
もし問題文に「残存価額 1円」とあれば、最後の年に、残存価額が1円になるように調整してください。
今まで100万円で償却していても、最後の年だけ999,999円にするのです。
処理は簡単なので、忘れないようにだけ気をつけてください。
では、ここから少し応用的な話になります。
しんどい人は、下の練習問題まで飛ばしちゃいましょう。
大丈夫ですか?
ではお話します。
なぜ定率法なんて、ややこしいやり方が存在してるかです。
「定額法の方が簡単なのに、なぜ定率法を採用してるの?」となりませんか?
これは、費用を平準化するために行われているんです。
難しい話ですね。
簡単なお話で例えてみましょう。
あなたはパソコンを買いました。
耐用年数は4年、残存価額0、償却率は0.5です。
このパソコンが160,000円だったとします。
定額法なら簡単ですね。
160,000÷4=40,000
となります。
毎年、40,000円を減価償却費として、費用に計上します。
でも、実際のところ、毎年費用の額を同じにするのは現実的ではありません。
パソコンなんて、4年もしたら古くなりますね。もしかすると3年目で使いものにならなくなる、なんてこともあるかもしれません。
そうすると、パソコンを修理に出しますね。
3年目に35,000円の修理費が発生したとしましょう。
費用は
1年目 40,000円(減価償却費)
2年目 40,000円(減価償却費)
3年目 40,000円(減価償却費)
+35,000円(修理費)
=75,000円
4年目 40,000円(減価償却費)
となり、3年目の負担が大きくなっています。
費用が定額になることを目指して、定額法にしたのの、結局は定額になってませんね。
では、4年間を通して、ほぼ同じような負担になるような方法はないか。
そうして生まれたのが「定率法」なのです。
前回、定率法の例題で作った表を見ましょう。
毎年、減価償却費は減少していますね。
これは、もしもの時のリスクに備えた対策なのです。
どういうことかというと、さっきのパソコンなら、時間が経てば経つほど修理の頻度も増えるし、修理費も増します。
最初の年より、耐用年数の後半の方が修理費が多くなるのは当然のことですね。
なので、「これから修理費が発生するし、耐用年数後半の費用が増すから、最初のうちは減価償却費を大きくしておこう」とするのです。
すると、このパソコンの減価償却費は
1年目 80,000円(減価償却費)
2年目 40,000円(減価償却費)
3年目 20,000円(減価償却費)
+35,000円(修理費)
=55,000円
4年目 20,000円(減価償却費)
となり、費用の偏りを防げます。
定額法とは違い、3年目の費用が飛び抜けて高い、ということがなくなりましたね。
1年目が高くなってしまっているのは、定率法の特徴です。
なので、気になるポイントからは外してください。
「これから先、何が起こるかわからないから、費用は余裕のあるうちに多めに出しておこう」とするのですね。
これはリスク回避の一つです。
簿記の試験でこんな理論の回答はしませんが、会計の分野になると、知っておかなければいけないことです。
今は軽く「へぇ、そうなんだ」くらいにしときましょう。
さて、こんな難しい話は置いておいて。
減価償却はパターンを覚えてしまえば解答は容易なので点数源になります。
慣れるまでは大変ですけどね。
3級を受験する人は定額法と定率法が計算できれば大丈夫です。
減価償却費が計算出来ればいいのです。
しかし、2級、1級と難易度が上がると「生産高比例法」「級数法」なんてのも出てきます。
(なんだかんだ言って、個人的に一番難しいのは定率法だと思いますが)
何も考えずに端的に仕訳を切るのと、内容を知った上で仕訳を切るのでは、応用問題に当たった時に差が出ます。
もちろん、応用問題も正解したいですよね?
内容を理解すれば、簿記は楽しくなります。
というのは私の持論ですが、確実に理解すれば問題も解けるようになります。
何回もいろんな問題を解いて、まずは基礎力を身につけましょう。
練習問題を用意しています。
仕訳が切れることはもちろんですが、B/Sの読み取りもしっかりできるようにしましょう。
最後に、ここまで読んでくれた方の疑問が解決していることを祈ります。
合格を目指して頑張りましょう!
減価償却 ③最難関の定率法
【前回】
https://pen-hakase.hatenablog.com/entry/2021/06/09/150000
前回まで、「定額法」という、最もオーソドックスな金額計算法を使いました。
では、皆さんが嫌いな「定率法」について説明しましょう。
そもそも、定率法とは何でしょうか。
定額法は「毎年決まった金額」を償却しました。
定率法は「毎年決まった率で計算した金額」を償却します。
これだけではわからないので、実際に例題を使って確認してみましょう。
.
『建物 取得価額 20,000,000円 耐用年数20年 償却率10%』
定率法のとき、注目すべきは「償却率」です。
問題によっては、200%定率法や250%定率法など、いろんな言葉を使って皆さんを惑わせてきますが、関係ありません。
その後の償却率の数字を見るのです。
今回は償却率10%です。
これをおさえましょう。
定率法のとき、耐用年数は計算に使いません。
(なんなら残存価額も使いません。これは次回お話します。)
先に解答を見せます。
本来は20年間、減価償却をするのですが、全て説明するとすごく長い記事になるので、4年目までの記載になってます。
4年しか減価償却しない、と誤解なさらないように。
では、1年目から説明します。
まず計算の式をお伝えします。
(帳簿価額−減価償却累計額)×償却率
言い換えると
未償却残高×償却率
です。
(帳簿価額−減価償却累計額)が未償却残高となります。
1年目は、まだ減価償却をしていないので、減価償却累計額がありません。
なので帳簿価額20,000,000円がそのまま未償却残高であり、この未償却残高に償却率をかけます。
%が使える電卓なら、%のまま計算してもらって構いません。
20,000,000×0.1=2,000,000
1年目の減価償却費は2,000,000円。
減価償却累計額はいくらですか?
今までの減価償却の合計額は今年の分だけなので、2,000,000円になります。
2年目
さあ、2年目からは大変です。
まず、未償却残高を出します。
まだ減価償却されていない部分の金額です。
これは、1年目のB/Sに載っている帳簿価額ですね。
20,000,000−2,000,000=18,000,000
18,000,000が未償却残高(前期末の帳簿価額であり、当期首の帳簿価額)です。
この18,000,000円に償却率をかけます。
18,000,000×0.1=1,800,000
2年目の減価償却費は1,800,000円です。
減価償却累計額は1年目の2,000,000円と2年目の1,800,000円を足した3,800,000円です。
ここから先は、文章もややこしくなるので、式のみを載せます。
「どう言う意味?何これ?」
「どの数字を使うの?」
となった人は、コメントでご指摘ください。
3年目
未償却残高
20,000,000−3,800,000=16,200,000
減価償却費
16,200,000×0.1=1,620,000
減価償却累計額
2,000,000+1,800,000+1,620,000
=5,420,000
4年目
未償却残高
16,200,000−1,620,000=14,580,000
減価償却費
14,580,000×0.1=1,458,000
減価償却累計額
5,420,000+1,458,000=6,878,000
4年目は違う方法で計算しました。
こちらが時短になるので、慣れてきたらこっちで計算できるようにしましょう。
こんな感じで、毎年計算していくのです。
定額法よりも面倒臭い作業ですね。
仕訳で使う勘定科目やB/Sの記載の方法は定額法の時と同じです。
確認しておきましょう。
仕訳の切り方
B/Sの表示の仕方
いろんな言葉がでてきて混乱し始めましたね。
つまるところ、減価償却には4パターンあるのです。
・定額法で直接法
・定額法で間接法
・定率法で直接法
・定率法で間接法
おすすめの解き方は、まず勘定科目を先に書いてしまうことです。
左に減価償却費がくるのは共通なので、決算仕訳を問われたら、まず先に減価償却費を書きましょう。
決算仕訳というのは、決算の日にする仕訳なので、総合問題では出題率がほぼ100%になります。
ちなみに、減価償却費が左なのは、「費」がついているからです。費用の「ひ」は左の「ひ」です。
次に右側の勘定科目を書きましょう。直接法なら減価償却をする資産の名前、間接法なら減価償却累計額です。
勘定科目名は問題に合わせてください。同じ車でも、問題によっては「車両」だったり「車両運搬具」だったりします。
減価償却累計額も同様です。問題によっては「車両運搬具減価償却累計額」という勘定科目を使うことがあれば「減価償却累計額」としか書いていないこともあります。
臨機応変に対応してください。
勘定科目を書いたら、次に金額の計算をしましょう。
直接法か間接法か見て勘定科目を書く
↓
定額法か定率法か見て金額を計算する
この順番で解けば、凡ミスも減らせるでしょう。
次回は少し込み入った内容になります。
練習問題もついてきますので、ぜひ参照してください。
【次回】
減価償却 ②定額法って?
【前回】
https://pen-hakase.hatenablog.com/entry/2021/06/08/150000
では問題を解いてみましょう。
建物の取得価額は20,000,000円です。
それを20年にわたって費用化(減価償却)します。
よって
2000万円÷20年=100万円
この100万円が一年に費用化する金額です。
大事なことになりますが、
減価償却は"決算時"に行ってください。
今回は4月1日に建物を購入し、3月31日が決算なため、100万円がそのまま減価償却費です。
【プチ発展】
もし、10月1日に購入していると、購入から半年で決算なため、100万円(年額)に6/12をしてください。
このような作業を「月割」と言います。
となります。
費用化した分、建物の価値が減りましたね。
「価値が減ること」これが減価償却なのです。
ここで勘定科目は「建物」が使われてますね。
建物の帳簿価額を直接減らしています。
これが直接法の特徴です。
逆に間接法もあります。
間接法では、仕訳は次のようになります。
間接法は「減価償却累計額(げんかしょうきゃく るいけいがく)」という勘定科目を使うのがポイントです。
減価償却累計額は、今まで減価償却してきた金額の合計額を集計する勘定科目です。
いきなり直接法と間接法なんて知らない言葉が出てきて戸惑われたと思います。
この2つは問題文にそれぞれ指示があり、問題文に合わせて使う勘定科目を変えなければなりません。
この2つの何が違うのかは詳しくは後で説明しますが、簡潔にお伝えすると、直接法なら固定資産の名称、間接法なら減価償却累計額を使って仕訳を切ります。
つまり、仕訳で使う用語が2パターンあるというわけです。
なお、左側に減価償却費を書くのは、直接法・間接法ともに共通です。
次に直接法でB/S(貸借対照表)とP/L(損益計算書)に与える影響を見ましょう。
(建物の購入以外をしていないという前提です)
なぜこのような話をするかというと、自分で貸借対照表から情報を読み取って、減価償却費を計算することが必要になるからです。
×1年4月1日 〜建物購入前〜
B/S
現金は50,000,000円所有しているという設定です。
×1年4月1日 〜建物購入後〜
B/S
建物を購入したので、建物が発生しました。
そして、建物の購入代金である20,000,000円分だけ現金の金額が減少しています。
B/S
P/L
そして決算を迎えました。
決算仕訳により、減価償却をしています。
よって、資産(建物)の金額が減少した分、費用(減価償却費)が発生しました。
では、来年はどういう処理をしますか?
そうです。同じことをするんです。
決算仕訳
×3年3月31日 〜決算時〜
B/S
P/L
建物の価値が減ってますね。
減価償却をしたからです。
現金の金額が変わっていないことが気になる人のために注記しておきます。
今回建物の購入以外はしていないという前提があります。
なので、建物購入以外にお金の変動はありません。
よって、現金は2年間同じ金額です。
先程、直接法と間接法という言葉に触れました。これは、B/Sに建物の金額を乗せるときの見せ方のルールの一つです。
B/Sでは、こんなふうに違います。
仕訳に使う勘定科目が違うせいで、表示も違う方法になっています。
どちらも建物の帳簿価額が19,000,000円であることを表しています。
直接法と間接法で仕訳が違うのは、B/Sの表示を変えるためなんです。
直接法の仕訳はこうでした。
なので、何年間も減価償却をして、仕訳を切れば切るほど、B/Sに表示される資産(建物)の金額は小さくなります。
直接法は一目で資産の今の価値が分かります。
逆に、一目見ただけでは今、減価償却をし始めて何年目なのか、わからないのが直接法の特徴です。
間接法の仕訳はこうです。
減価償却累計額は「負債」です。
しかし、負債なのに表示するのは建物の下、つまりは資産項目に並べるんです。
負債なので、資産項目をマイナスする項目として記載します。
( )や△をつけることで、マイナスすることを示しています。
間接法によると、建物を買ったときの価額(取得価額)と、今まで減価償却してきた金額(減価償却累計額)と、今残っている価値(帳簿価額)の全てを見ることができます。
処理はめんどくさいけど、全ての金額を記載してるやり方。それが間接法なんです。
【次回】
減価償却【全4回】 ①減価償却って?
減価償却(げんかしょうきゃく)って簿記を勉強していると必ず耳にしますよね。
特に総合問題に減価償却の問いは付き物です。
何となくやり方を暗記してしまっていることはありませんか?
減価償却を知らない人は、そもそも減価償却って何?となるでしょう。
字の通り「価値を減らす償却」のことです。
しかし、これだけで意味がわかれば苦労はしませんね。
例題を見ながら考えてみましょう。
(以下、決算は3月31日とします)
例えば
『×1年4月1日に建物を20,000,000円を現金で購入した。』
どんな仕訳になりますか?
皆さんこの仕訳を書きますよね。
もちろん正解です。
ここで注目したいのは「建物」という勘定科目です。
「建物」ってB/S(貸借対照表)の「資産」ですよね。
つまり、このままでは永遠に「費用」にはならないんです。
「なぜ費用にならないの?」
「そもそも費用になることってあるの?」
と疑問を持つ方がいるかもしれません。
例えば、商品なら売れたら売上原価として費用に計上できます。
原価は費用というのは想像しやすいかと思います。
しかし、固定資産は売却しても費用にはならないんです。(売却損益は出ますが)
建物取得費なんて勘定科目があれば取得時に費用になるんですけど、現行の規定では採用されていません。
だから減価償却によって費用化するんです。
「じゃあ、何で費用化したいの?」
と思ってしまいますね。
固定資産は物によっては、何千万円もしくは何億円になります。
これがすべて購入時には資産として計上されています。
資産に計上されることは悪いことなのか。そういうわけではありません。
ただ、結果として、税金が高くなってしまいます。
例えば、利益に40%をかけて税金を計算するとします。
売上が100億円で費用が0円なら、利益は100億円です。
納める税金は100億円×40%=40億となります。
では、減価償却をすればどう変わるでしょうか。
減価償却費が2億円発生したとします。
売上が100億円で費用が2億円なため、利益は98億円です。
納める税金は98億円×40%=39億2000万円となります。
費用が発生したおかげで利益が少なくなり、税金は安くなるのです。
なので、会社としては費用をたくさん出したいわけです。
だから、資産として計上するより、費用にしたいんですね。
先程の例題に戻ってみましょう。
『×1年4月1日に建物を20,000,000円を現金で購入した。』
ここで問題文に追加要素です。
実はこの問題の続きに
「建物は定額法により処理するものとし、耐用年数は20年である」
と記載がありました。
「定額法って? 耐用年数?」
となりますね。
定額法とは、減価償却の金額をいくらにするかを決める方法の一つです。
簡単に言うと、減価償却の金額を毎年同じ金額にしようとするやり方です。
では、毎年っていったい何年間くらい減価償却するの?
というときに使うのが耐用年数です。
この問題の場合、耐用年数が20年なので、20年にわたって建物を使用します。
だから、20年間同じ金額を費用にしてください、と言っているのです。
では、どうすればいいでしょうか。
難しく考えてはいけません。
買ったときの取得価額を20年間で減価償却すればいいんです。
減価償却とは固定資産の価値を減らすことでした。
先に答えを言っておきますと、減価償却費は100万円です。
計算式は次回お伝えします。
取得価額を耐用年数で償却するわけですが、そもそも取得価額とは買ったときの時価のことです。
つまり仕訳で
としたときの、この2000万円が買ったときの時価、つまり取得価額です。
今回新しい用語がいくつか出てきましたが、
「減価償却」
「定額法」
「耐用年数」
「取得価額」
はしっかりおさえるようにしてください。
(「償却」を「消却」と間違えないように注意してください。簿記あるあるです)
減価償却は問題として出題されるパターンがいくつかあります。
簡単なのは、仕訳問題として問題文に情報がすべて載っているパターン。
慣れが必要になるのは、B/Sから情報を探すパターン。どの数字がいつ時点のものなのか(期首なのか期末なのか)、わかっていないと解けません。
難しいのは、必要な情報が表に載っているパターン。この場合、一部の情報が空欄になっていることがあります。すると、その情報も自分で計算しなければなりません。減価償却累計額が空欄だったり、取得価額を自分で計算しなければいけないこともあります。
試験ではどれが出題されるかわかりません。第4回に練習問題があるので、数をこなしてできるようになりましょう。
次回、減価償却の詳しい手続きを紹介します。
【次回】
現金預金 ③小切手を振り出した人 ※練習問題あり
次はBさんです。
Bさんは懐から紙切れを取り出し、金額を書き込みました。
これが「小切手」でしたね。
Bさんは小切手をAさんに渡しただけでは何も起こりません。
Aさんはアルファ銀行に行って、小切手を現金にしてもらっています。
でも、Bさんのベータ銀行の口座に影響は出てませんね。
もちろん、これで終わるわけがありません。
アルファ銀行がAさんにお金を渡した分、アルファ銀行のお金が減って損をしています。
なので、アルファ銀行はベータ銀行のBさんの口座からお金を貰います。
すると、Bさんの当座預金口座の残高が減りますね。
Bさんは何もせず、自動的に当座預金から小切手の決済が行われるのです。
Bさんがとった行動は、小切手に金額を書き込んでAさんに渡すことです。
そしてその後に自動的に当座預金がなくなるのですから、わざわざ小切手を仕訳に書く必要はありません。気づけば決済が終わっているのですから。
だから、最初から当座預金を使うのです。
「小切手を振り出して支払った」というのは、つまり「小切手をポケットから取り出し、金額を書き込んで渡したら、いつのまにか自動的に当座預金から支払われていた」ということなのです。
以上のことから、Bさんの仕訳はこうなりますね。
『Bさんは商品を仕入れ、代金は小切手を振り出して支払った。』
では最後に完成する仕訳を再確認します。
Aさん(商品を売った側)
(直ちに当座預金に振り込めば)
「小切手を振り出して支払った」なら
「小切手を受け取った」なら
現金の増加(嬉しいので、現金が左)
ただし、「すぐに当座預金に振り込み」をしたなら
でいいでしょう。
ただ、取引の流れを知っていれば学習の理解は深まります。
これで基本的な仕訳の問題は、なんとなく出来る様になります。
でも「仕訳は書けるのに、何があったのかよくわかってない」では、難化する試験には受かりません。
次から貸倒(かしだおれ)や減価償却(げんかしょうきゃく)などといった個別の論点も解説します。
一つ一つ丁寧に押さえ、基礎が出来れば応用も気付けば解けます。
「基礎を固める」
これほど簿記のために用意された言葉はありません。
1日5分でも簿記に触れる。
自分で目標を持って頑張りましょう。
さて、練習問題を用意しています。
今回は全商の問題の改題です。
腕試しをしましょう。
それでは、合格を目指して頑張りましょう!